都市農業、挑戦の記録。

わかる人には、わかる卵

「ここで仕事をするようになって気付いたことは、卵にこんなにこだわって買いにこられるお客さんが、いてくれはるんやなぁってことです」という敏弘さん。

以前は、敏弘さんご自身が、卵にそれほど関心をもっていなかった。転職時は、大阪は養鶏農家が少ないので、ある意味ビジネスチャンスだという程度に思っていた。しかし蓋を開けてみると、全国各地から安い卵がどんどん大阪に入ってくる。価格競争では太刀打ちできない。ところが、谷川養鶏へ卵を買いにくる顧客は後を絶たない。

「数ある卵の中から、うちを選んでくれるお客さまがいてくださる。その期待に応えられるよう、これからも正々堂々正直に、ウソのないこだわりの卵をつくり続けたいと思っています」と、キラキラした目で語る敏弘さん。

卵の味や品質を決めるのは、鶏が育つ環境と食べる餌。そこへ生産者の心意気が加わったのが谷川養鶏の卵である。一切の妥協はせず、手間暇を惜しまないのが谷川養鶏の流儀なのだ。安価な卵がどんなに市場へ出回っていても、わかる人にはわかる価値のある卵がここにあった。

取材日　2019／1／21

記　事　中塚華奈

写　真　柴田久子