自然農で里山を守る、グローカルなウーフホスト。

飯阪誠さん しいたけ

(いいさかまこと / めちゃうま農園)

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飯阪誠さん(49)は、和泉市の里山で原木シイタケ、竹藪でタケノコを採り、ヤギやニワトリを飼い、自然農を営んでいる。

台風で壊滅してしまったシイタケ山

「えらいことになってしまったんです。シイタケ山が壊滅状態で、もう30アールくらいしか残っていません」。取材はショッキングな言葉から始まった。

原木シイタケのホダ場の3分の2が、倒れてきたスギやヒノキの下敷きになってしまったという。平成30年9月、最大瞬間風速58.1メートルで大阪を襲った台風21号(チェービー)の影響である。

「唯一無事だったホダ場へ行ってみますか」誠さんのあとについて、木漏れ日が差し込むシイタケ山の中へ。

とことんこだわる駒菌での原木栽培

誠さんが農業を始めたのは、20年前。スーパーマーケットや百貨店の内装の仕事に携わっていたが、会社の倒産をきっかけに「自分の手でモノを生み出す仕事がしたい」と農業へ転身。兼業農家だった両親が40年前に始めた椎茸栽培を継いだ。

「どうせやるなら、とことんこだわろうと思ったんです」誠さんは原木栽培でシイタケを生産している。クヌギ、コナラ等の原木に種菌を植え付け、それを並べたり水につけたりする作業が必要であり、手間がかかる栽培方法である。植菌して約3週間でシイタケが出てくる菌床栽培とは異なる。

原木栽培と言っても、植菌の方法によって、生育速度や品質が異なる。1つはコルク形状の成型菌を原木に植え付ける方法で、これは樹皮の厚さに関係なく、春に植菌するとその年の秋には、成型菌を打ち込んだところからシイタケが発生してくる。

もう1つは、菌糸を培養した駒菌を原木に埋め込む方法。この場合、埋め込んだ駒菌の菌糸が原木全体に蔓延し、原木の内側から至る所、樹皮を破ってシイタケが発生してくる。誠さんが使っているのは、駒菌である。

「駒菌を埋め込んだ後、シイタケが顔を出すまで約2年です。木の養分をたっぷり吸収して出てくるので、うま味も香りも栄養も他の栽培方法に比べて抜群なんですよ。分析したところ、ビタミンD の含有量は一般的なシイタケの5倍もあるんです」。

原木からポコっと出ているシイタケを一つもぎとってくれた。採りたてのシイタケを生で食べたのは初めて。口に広がる旨味と鼻から抜ける香りと食感が相まって、めちゃうまである。

誠さんのおすすめは、塩やポン酢だけで食べる焼きシイタケ。シイタケのヒダにマヨネーズととろける粉チーズ、ケチャップをかけてオーブントースターで焼いたイタリアンテイストもお気に入りとのこと。石づきを除くと、しいたけの軸も美味しくいただけた。

「収穫を終えた原木は、山でゆっくり休ませてから谷川の水に浸し、次の発生を促します」。

壮絶な現場からSOS

谷川にいくまでの間に、倒木の下敷きになってしまったホダ場があった。一見、伐採したかのような光景。言葉が出ずに涙が出てきた。

植林したのは、誠さんの祖父。約60 年かけて大きくなったスギやヒノキが、たった2 時間のあの台風通過でなぎ倒されたのだ。この大量の倒木の下にホダ木が埋もれている。復旧作業に長い時間と人手を要することは一目瞭然。

誠さんは、台風で倒れたヒノキをその場で輪切りにしてくださった。とても良い香り。そのまま芳香剤として、また鍋敷きやランチョンマット、表札やルームプレートとして使えそうである。被害を受けた倒木の有効活用について、復旧の合間も模索が続いている。

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