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「モノづくりのまち」として知られる東大阪市は、工場密度が全国1位の中核市である。かつては大和川の付け替えによる新田での稲作と河内木綿の大産地であったが、今や農地面積は市面積の4%にとどまり、農家戸数は137戸。
米農家の21代目
その東大阪市で農業を営む、田中成嘉さんを訪ねた。この地で代々続く米農家の21代目だ。現在、東大阪市内では80アールの田んぼで米、レタス、ハクサイを栽培している。「買ってくれる人の顔が見えるから」有機肥料で土づくりを行い、できる限り農薬を減らして栽培。大阪府のエコ農産物の認証を取得し、米はJAへ、野菜はJAの直売所と朝市に出荷している。
「テーピング」&「切り口見せ」がフレッシュな証拠
成嘉さんにとっての大阪農業の魅力は「鮮度のよいものを届けられること」。消費地のど真ん中に畑があり、レタスとハクサイはその日に収穫したものしか出荷しない。新鮮だからこそ、ラッピングはせずテーピングのみ。おしり側の切り口を見せて陳列することで、フレッシュさをアピール。
レタスは、シャキシャキ感の強い品種を選んでいる。サンドイッチにたっぷり挟むもよし、しゃぶしゃぶ、味噌汁の具として楽しむのもおすすめ。
大阪府下で若手の土地改良区の理事長
成嘉さんが農業を継いだきっかけは、お祖父さんのガンが発覚したことだった。「自分も米農家になって農地を守っていくと、祖父と約束したんです。」
高校卒業後は、立命館大学の産業社会学部に進学。地域計画を研究するゼミに所属し、群馬県の板倉町に農村調査に出かけることもあった。農学部への進学は、考えなかったのかをお尋ねすると、「文系やったんで。」とにっこり。
大学を卒業した直後に、お祖父さんが他界。成嘉さんは、恩師の深井先生の紹介で、長野県南佐久郡南牧村の野辺山高原へ。有機肥料・減農薬で高原野菜を大規模生産している農家に住み込みで研修した。
半年間の研修を終えて、東大阪に戻り就農。今年で36年目のベテラン農家である。御年59歳になる成嘉さんであるが、大阪府下で地域毎に選出される「土地改良区の理事長」の中では、「フレッシュな若手農家」になるのだそうだ。
成嘉さん流「田んぼつきマンション」
都市農家には、農業と不動産管理業の兼業が多い。成嘉さんもご多分に漏れず、平成6年より3LDKのマンションを管理しているが、入居者募集時に、他のマンションではあまり聞いたことがない特典をつけていた。その名は「田んぼつきマンション」。
「あの頃は、入居者のご家族に、うちの田んぼで田植えや稲刈りの体験をしてもらい、新米のおむすびを食べる収穫祭にご招待していました」
このユニークなアイディアは、当時、小さい子供連れのご家族にたいへん好評で、募集していた55戸は、あっという間に契約成立となった。現在では家族形態が変わり、田んぼでのイベントは実施していないが、当時は、新聞にも掲載されるほど話題にのぼった。
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