フラワーコミュニケーション。花があるから始まる事。

金田博充さん 花卉

(かなたひろみつ / 花工場大阪)

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大阪市住吉区の花壇苗農家、金田博充さん(48)。就農して今年で21年目。パンジー、ビオラ、葉ボタン、ガーデンシクラメン、サクラソウ、ナデシコ、ベゴニア、ペチュニア、サルビア、マリーゴールド、ノースポール、デイジーなど、年間に約40種類の花の苗を生産している。

出荷先は、卸売市場、種苗会社や造園会社、東大阪のJAの直売所などへ年間約35万ポット。小学校や幼稚園からは花壇づくり用の苗、その他にも年末に寄せ植えの注文が入ることもある。

大阪市と堺市のデュアル営農

大阪市住吉区にある畑のほか、大阪市に隣接する堺市にも所有農地があり、片道20分の距離を、毎日トラックで3往復は走る。

「毎日どれだけこまめな手入れができるかで、品質に差がでてくるように思います」。近年、2つの地域拠点で生活するデュアルライフを送る人が増えつつあるが、博充さんは、2つの地域で農業を営む、いわばデュアル営農の実践者ともいえよう。

「蒔いた種が芽吹いた時、活着して大きくなってきた時、今年はええのんができたなと思える時。そんな時はとても嬉しく、農業の楽しさを実感します」。

ビニールハウスの中では、様々な色のパンジー、ビオラ、ナデシコ、ヒメキンギョソウなどが咲き誇っていた。道路に面したビニールハウスでは、道行く人の「綺麗やなぁ」と言う言葉が聞こえることがある。「癒しや安らぎ」の提供は農業の多面的機能の一つとされる。

花の出来を、土からこだわる

「ストレスなく大きくなるように、花にあわせてpHを調整し、土を配合するんです」。博充さんオリジナルのこだわりの土で育った花壇苗は、見栄えが美しく高品質で、日持ちも良い。「苗がうまく育たなかった時、暑さや寒さなどの天候を言い訳にはしたくないんです」とストイックに話す博充さん。

「大阪の卸売市場はすぐ近くなので、畑と市場の気温差はゼロに近い。定温輸送をしているようなものなので、花に負担をかけにくい。うちの花が元気な理由の一つはそこにあります」。消費地にも市場にも近いのが、大阪農業の強みである。

博充さんは、平成10年に大阪市農産物品評会で「大阪市長賞(葉ボタン)」、平成26年に大阪府花卉園芸品評会にて「農林水産大臣賞(ガーデンシクラメン)」に入賞。平成30年には、「なにわ農業賞」も受賞した。

なにわ農業賞とは、先進的な農業経営活動によって地域農業をリードし、大阪農業の存在価値の向上に寄与する農業経営者に与えられるものである。

責任を受け継ぎ、イノベーションを起こす

博充さんが脱サラして就農したのは、26歳の時。好奇心旺盛だった博充さんの父は、一般的な野菜栽培に加え、カイワレやクレソンなどの水耕栽培をしていたこともあったが、市役所からの打診があり花卉栽培に転換。大阪市の入札指定業者になるには生産量を増やす必要があり、それが博充さんの就農を後押しした。

「親父からは、何も言われたことはないのですが、ゆくゆくは継ぐつもりでした」。金田家の長男である博充さんは、父の姿を見て育ち、跡取りとしての責任を感じていたのだった。

「農業のことは、ほとんど知らない状態で就農しました。今になって思うことは、農業がどれだけ好きでも、農地がないと何もできない。承継できる農地があったことは、有り難かったです」。

博充さんの代にバトンタッチしてからは、生産性重視から品質重視へと農業経営方針を転換。栽培品目を単価の高い品目や品種へ変更。ポットの置き方は従来より少し高さを出し、ベンチに置く方式を導入。作業における腰の疲れが軽減でき、水にも浸からないため一石二鳥であるという。

博充さんは、中学校の職場体験の受け入れやJAのイベントにも積極的に協力している。今後、まだまだ挑戦したいことがある。花壇苗をデイサービスのレクリエーションへ活用したい、寄せ植え体験イベントへ提供したい、エディブルフラワー(食べられる花)の生産や販路開拓にとりくみたい。

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