頭を下げることを知り、仕事に自信とやり甲斐を知る。

射手矢康之さん 泉州たまねぎ

(いてややすゆき / 長左エ門 十代目、射手矢農園株式会社)

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亡き父を偲び、いまを活きる

口座を凍結されそうになった資金面でのピンチも過去にはあった。それほど経営が苦しい時でも地域の寺や神社に寄進を欠かさない父の行動はとても理解ができず、口論やケンカになる事もあった。「大きな山も近くでは険しい道や崖ばかりにしか見えなかった」。親父さんを“大きな山”と例えるほど、今は誇りに思っているのだろう。

葬儀の日、1000人を超える参列者を目にしたとき、親父のやってきたことをやっと俯瞰して見ることができた。あのときは理解できなかったことが多かったけど、今では親父の行動は何かのためになっているんだ、と思ってそれを見習っている。

精米300Kgを被災地に送る

東日本大震災の直後に、筆者が地域から救援物資を集めて東北に届ける活動をしたとき、近しい農家さんに「米一袋(30Kg)分けてください」とお願いした。大阪と東北は距離もあってか実感がわかないくらい遠い世界なのだろうか、なかなか物資が集まらない。

先輩の康之さんにもお願いした。すると即答「わかった、若いもんに届けさせるわ」と快諾。

ほどなく届いたお米は精米したての10袋、計300Kgもあってビックリ、大感激したことを今でも鮮明に覚えている。

「(長左エ門の)名前は伏せておけよ」との言葉にしたがって、「お米が集まりだしました。いま300Kgです」と地域に拡散した結果、他の農家や有志からも物資が集まり、米4トンとその他生活物資4トンの合計8トンの物資を被災地に届けることができた。

あのとき康之さんが米300Kgをポンと出してくれなかったら上手く集まらなかったと思う。これも親父さん譲りの「志(こころざし)」といったところだろう。

お昼はみんな一緒に

「毎日おいしいです!」おかわりする従業員さんの言葉。食卓に並べられたおかずは見るからにうまそう。個々人ごとの配膳ではない、大鍋、大皿、お櫃を分け合う、これぞ農家の食卓だ。

射手矢農園では康之さんのお母さんと奥さんが昼食をつくり、従業員みんなで昼飯を食べるのが日課。本日の献立は、肉じゃが、パスタ、スクランブルエッグ、タマネギスライス、ご飯、味噌汁、お漬物。大半が自家食材というから贅沢なランチだなと感心せざるを得ない。

作物を育てる人を育てる

スタッフの顔ぶれは、いわゆるヤンチャな感じだ。ケンカの強そうな若者、世界を旅する若者、レゲエミュージシャン、いわゆるフリーターだった人、など色々なタイプの人が募集せずに集まってくるという。

康之さんを囲んでの昼食も束の間、みんな早食いで「ごちそうさま!」と元気よく発した瞬間、康之さんを残してダイニングを出て行った。

さすがに親方と昼ご飯後もずっと一緒は窮屈なんだろうと思ったが違った。休憩室でバンドの練習をはじめた。近々ライブを開催するのでその練習、聞くと射手矢農園では若い人たちのやりたいことを応援してくれるとのことだった。

音楽のほかに山仕事もやってみたいという若者には、所有山林を使わせてあげる予定。康之さんは美味しい農作物を育てるだけでなく「人」を育てる、そんなかっこいい兄貴みたいな社長だということがよくわかった。

取材日 2018/5/21

記 事 福島征二

写 真 ミヤギナミエ

氏名 / ふりがな
射手矢康之 / いてややすゆき
前職 / 出身校
貝塚南高校
組織名
長左エ門 十代目、射手矢農園株式会社
役職
代表
主な生産作物
泉州たまねぎ / 泉州キャベツ
特徴
十代続く専業農家
理念
伝統と素晴らしい味を守りたくて百姓やってます
~食卓が明るくなる野菜を育てます~
JAエリア
JA大阪泉州
購入方法
射手矢農園オンラインストア : http://store.tamanegi.tv/
ホームページ
射手矢農園の泉州たまねぎ長左エ門 : http://www.tamanegi.tv/
SNS
Facebook : https://www.facebook.com/iteyafarm/
Facebook (個人) : https://www.facebook.com/iteya.yasuyuki

長左エ門 十代目、射手矢農園株式会社

大阪府泉佐野市上之郷3301

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