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日本原産、ふき栽培
泉佐野市上之郷の野中忠重さん(40歳)が栽培している「大阪ふき(蕗)」。「なにわ特産品」(大阪府が選定。府内でまとまった生産量があり、独自の栽培技術で生産されている農産物21品目)のひとつである。忠重さんは「野中ファーム」の3代目。
「うちは、祖父の代からふきを栽培しています。ふきをつくる人がだんだん減ってきたので、少しでも伝統を引き継いでいけたらいいな、と思っています」という忠重さん。ふきは、数少ない日本原産の植物。昔から、日本の山野に自生していたキク科の植物である。「くさかんむり」に「路」という漢字からも、野山はもちろん身近な道端に生えていた「草」だったことが想像できる。
日本の最も古い植物の本「本草和名(ほんぞうわみょう)」(918年)や、平安時代の律令施行細則を定めた「延喜式(えんぎしき)」(927年)では、ふきの栽培方法や食用・薬用としての利用方法が載っており、平安時代すでに栽培されていたことがわかる。江戸時代の農書「農業全書」(1697年)では「款冬(ふき)」として紹介され、利潤が高い商品作物であると紹介されている。
背丈も単収も高い、のびすぎでんねん
大阪府のふき出荷量は、愛知県、群馬県に続いて全国で第3位。生産者の努力や品種改良の成果もあって、単収(10アール当たりの収穫量)は全国第1位を誇る。
泉州のふき栽培は、大正時代に「河内ふき(水ふき)」が木島村(現:貝塚市)に導入されたのが始まりとされている。
昭和初期、水ぶきより収穫期が早く、収量が多い品種「愛知早生」が愛知県から導入された。昭和15年頃までは門外不出とされ、栽培は一部の生産者に限定されていたが、収益性の利点から貝塚市全域に広がり、「東の愛知、西の貝塚」と言われるほどの大産地が形成された。今や大阪ふきは、たまねぎやキャベツと並ぶ泉州の特産品のひとつになっている。
ふきは栄養繁殖(胚や種子ではなく、根や茎から次の植物が繁殖すること)で増やす。そのため、導入後70年以上たつと、株の老化やウイルス感染による生産性および品質の低下が深刻な問題になっていた。2002年、組織培養技術によって大阪府立農林技術センター(現・大阪府立環境農林水産総合研究所)が「愛知早生」から新品種を育成した。「大阪農技育成1号」である。
生育の早さ、彩り、みずみずしさ、歯触り、香り、甘味、収量が従来のふきより優れており、すらりと伸びた大きさの違いは一目瞭然。当時の大阪府知事であった横山ノック氏が、この新品種の愛称を「のびすぎでんねん」と命名した。
市場出荷、規格は16種類
倉庫ではちょうど、忠重さんと父が一緒に収穫してきた「のびすぎでんねん」の調整中だった。市場出荷用のふきには、大きさや色あい、出荷箱に入れる本数や束数によって、等級(秀・丸秀・優)や階級(特天・天・2L・L・桜)など、全部で16種類もの規格が定められている。ビニールシートの上に、規格毎に分けられたふきがずらりと並んだ光景は圧巻だ。
「1尺くらいのものから長いものだと4尺くらいになるふきもあります」という忠重さん。1尺は約30センチメートルなので4尺となると約120センチ。さすが、「のびすぎでんねん」である。長さをあわせて、包装資材でクルクルと巻き、出荷箱につめる。出荷用の段ボール箱のサイズもかなりのビッグサイズである。
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