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ノーカではなく、メーカー
キノシタファーム代表の木下健司さん(39)の畑は、岸和田市と和泉市にあり、合計約1ヘクタール。年間に出荷するミニトマトは約30トン。「アマメイド(Amamade)」という独自ブランドを立ち上げ、糖度が8以上のミニトマトを通年出荷している。
スーパーや小売店にとって、棚が空っぽになる「欠品」はご法度。健司さんがミニトマトの「メーカー」を名乗る背景には、「商社での代理店(卸)業」「スーパーへの食肉卸業」「製紙メーカーの営業」という異業種での職場経験がある。取引先が何を求めているかを汲み取ることの大切さを、熟知している。
「農家は商品の作り手、メーカーなんです。仕入れる側のニーズを考えて、メーカー的な売り方を目指しました。それが味と収量の安定生産を実現化したアマメイド・ブランドのミニトマトなんです」。
土のことは土のプロに任せる、バッグ栽培
和泉市にあるミニトマトのハウスを訪ねた。袋がずらりと並ぶ不思議な光景。1つのバッグ(袋)から4本のトマトが元気よく伸びている。
バッグ栽培では、ミネラル豊富な有機肥料入りの土の入った袋に苗を直接定植する。潅水制御ロボットによる水管理と天然肥料の追肥で、高糖度かつ酸味のバランスがよいトマトが育つオリジナルの栽培方法である。土の肥料成分は肥料会社のノウハウを活かして設計されている。
「土のことは土の専門家に任せています。うちはその土を使って安定的に美味しいミニトマトを栽培する。それがメーカーとしての使命です」。なるほど、「餅は餅屋」ということだ。
実家が農家は、アドバンテージ
健司さんの就農の決め手は、知人に将来のことを相談した時に言われた一言だった。「実家が農家で、農業がしたいと思えばすぐ出来るのは、ものすごいアドバンテージがあるってことやで」と。
「そう言われたら確かにそうやな」と思った健司さん。早速、「俺、農業をやる」と両親に宣言した。「父は喜んでくれました。しかし、母は反対したんです」。
健司さんの実家は、昔はミカンとナス、今は軟弱野菜を作る岸和田の昔ながらの農家。健司さんは日頃から「農業は継がなくてもいい」と言われ、木下家では所有農地を縮小してきた経緯もあった。
母は「健司が一緒に農業をすることになったら、わたしの仕事がなくなるやん」と拗ねモード。そこで、健司さんは独立を宣言。「親父やおかんと同じような農業はせえへん。俺はちがうカタチの農業を目指すんや!」
運命の出合い、バッグ栽培トマト
農閑期に大阪府主催の農業経営講座に参加した健司さん。そこではじめて「バッグ栽培」によるトマトづくりを知った。トマトはあまり好きではなかったが、試しに一つ口にいれてみた。ハリがあり、皮がしっかりしたシャリシャリ感フルーツのような甘さとほどよい酸味、トマトの風味と旨みが感じられた。生まれてはじめて「美味しい」と思えるトマトに出合った瞬間だった。
運命の出合いにより、健司さんは愛知県で半年、バッグ栽培の研修を受けることとなった。「僕が研修をしている間、父は受け入れ準備に奔走してくれていたんです」。研修から帰ってきたら、岸和田のハウスを10アールほど借りられることになっていた。
また、ちょうど同じ頃、岸和田市にJAの直売所(愛彩ランド)の建設計画があり、近隣農家に赤2品(イチゴとトマト)、とくにトマトの出荷打診があったのもグッドタイミングだった。