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大阪市と奈良県に隣接する大東市。古来より、京都と高野山を結ぶ交通の要所として栄えた土地だ。現在では、大阪屈指のターミナル駅京橋から電車で約20分とアクセス良好。生駒山地の麓、大東市北条町を訪ねた。
大東市唯一の専業農家
橋本嘉昭さん(33)は、橋本ファミリーファームの6代目。かつて豊かな農業生産地であった大東市で、今や唯一の専業農家である。
農園の名の通り、ご両親との家族経営。8年前に家業を継ぎ、ここ北条町を拠点に水耕栽培のトマト、米、季節野菜を生産している。「息子が継いでくれて、嬉しいに決まってるやろ!」と朝から威勢のいいお父さん。隣でお母さんが、声を立てて笑いながら出荷作業を行う。なんとも賑やかな家族の光景が広がっていた。
環境に配慮した水耕栽培
メインの作物は水耕栽培のミニトマト。33年前に、父が当時最先端といわれた技術をいち早く導入。海外からも視察が訪れるなど、施設は話題になったという。
栽培には土を使わない。根圏にたっぷりの液肥を常に流す。根を自由にさせることで栄養吸収が活発になり、生育が良くなる仕組み。液肥とともに流れる水は施設の外には排出させず、タンクで綺麗にして循環させる。味や効率だけでなく、自然環境にも配慮を欠かさない。
「環境にも人にも、できる限り安全な農業をしたいと思っているんです」と嘉昭さん。大学では水質汚染や土壌問題など、環境保全への理解を深めた。1歳になる愛娘の存在が、こうした想いをより強くさせるのだと話す。
自分の野菜は、自分で売る
大学卒業後は、青果仲卸企業に就職。全国2位の規模を誇る大阪市中央卸売市場で、流通の現場に身を置いた。家族の野菜が、どのようにして世へ届くのか。その過程を知る日々は新鮮だったが、葛藤も多かったと振り返る。
「こんなに品質の良いものが、こんなに安い価格で取引されているなんて」。市場出荷は全量買取をしてくれるメリットがあるのと同時に、生産者自身が価格を設定できない。価格は、市場相場に大きく左右されるのだ。生産者の息子としては受け入れ難い側面があった。
嘉昭さんが橋本ファミリーファームを継いで以降、野菜は卸売市場に出荷していないという。JA大阪東部の朝市や地元スーパーなど、直接取引ができる販路を開拓したのだ。
大阪農業を全国へ発信する
2018年には若手生産者グループ「大阪府4Hクラブ*連絡協議会」の会長に就任。約50年ぶりに大阪で行われる「全国農業青年交換大会」の成功に意欲を見せる。
*4Hクラブとは、農業の改良、改善をめざして活動する青年組織。4Hは腕(Hand)、頭(Head)、心(Heart)、健康(Health)の頭文字。
開催は2019年2月。準備も大詰めに近づき、一息つく暇もなく過ごす毎日だが、その表情は明るい。同世代の頑張っている姿に刺激を受けて、持ち前の負けん気が騒ぐのだという。