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- 若ごぼう
生駒山系を境に奈良県に隣接する八尾市。古くから豊かな水田地帯を有し、かつては「河内木綿」の産地であった。今は「八尾若ごぼう」と「八尾えだまめ」、二つのブランド野菜を特産に持つ大阪の重要な生産地だ。
訪れたのは生駒山地南部の一主峰、高安山(たかやすやま)の麓に広がる八尾市恩智(おんぢ)町。松岡孝明さん(53)は、歴30年のベテラン農家だ。春に若ごぼう、夏は枝豆、秋には落花生などの季節野菜を生産している。恩智は、千年以上の歴史ある恩智祭りで知られる町。孝明さん、夏は祭りに熱くなる。
春を告げる、伝統野菜
若ごぼうは一般的なごぼうと同じくキク科の野菜。根だけでなく葉や軸まで食せることから、全国的には、葉ごぼうとも呼ばれている。
歴史は江戸時代に遡る。中国から薬として伝わり、大阪の上町台地で栽培されていたものが、徐々に南下。 宝永元年(1704)に地域を流れていた大和川の付け替え工事が行われ、その結果発生した川底や川床跡の砂地との相性がよく、八尾市でも栽培が普及したという。
現在は全国トップクラスの出荷量を誇り、なにわの伝統野菜にも指定されている。2月から4月上旬にしか収穫できないため、地元では「春を告げる野菜」と親しまれてきた。
秋冬をまたぐ、若ごぼう栽培
「春のイメージが強いからあまり知られてないけど、農家にとっては一年一緒に過ごす野菜。みんなが思うよりも栽培に時間が掛かるねん」と孝明さん。
若ごぼうの栽培準備は夏に始まる。まずは種を採る作業から。梅雨明けの7月、残しておいた花から採種を行う。9月中旬、畑に自家採種した種を撒く。霜が降りる12月、育った葉と軸を一度枯らす。根だけを残して刈り取り、再び生えてくるのを待つと春がやってくる。
じっくり育った若ごぼうは、根の部分までやわらかい。シャキシャキとした食感とほろ苦い味わい。ごぼう特有の香りがクセになる。小さい頃から食べ慣れている孝明さんにとっても、春だけの味は格別なもの。
「シンプルな煮浸しが一番うまい。できたての熱いのも好きやし、冷めて味が染み込んだのもたまらんなあ」。お鍋いっぱいに煮浸しを作っても、ひとりで平らげてしまうほどだと、隣に居た奥さんも笑った。
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