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八尾市は大都市の中心大阪市の西に隣接している。また東の奈良県境には生駒山系があり、都市と自然の融合地点的な色合いもある街だ。
大阪人に「八尾」と聞いてみると、だいたいの人は「河内音頭」という。これほんとの話。「いやこらせ~どっこいせ」や「そらよいとこさっさのよいやっさっさ」とお聞き覚えのフレーズの河内音頭である。八尾市が河内音頭発祥の地とも言われており、夏になれば盛大な盆踊りが市内各所で繰り広げられている。
八尾市には、近鉄大阪線、JR大和路線、大阪メトロ谷町線と交通網が多数あり、河内音頭の夏だけでなくに、久宝寺寺内町や高安山麓ハイキング、そして今回紹介する恩智祭りなど、ぜひ訪れてほしい大阪名物タウンの一つだ。
えだまめの塩茹でがおやつ
その八尾でもう一つ忘れてはならない夏の風物詩が「八尾えだまめ」である。八尾市にえだまめ? という方もいるかもしれないが、実は大阪トップの生産量を誇り、近畿地方有数のえだまめ産地がここ八尾市なのである。市内各所に100軒以上のえだまめ生産者がいて、合計約100トンもの枝豆を生産している。
今回訪れた八尾えだまめの生産者さんは八尾市恩智(おんぢ)地域の浅井博さん(48)、両親と妻と博さんの家族経営。八尾えだまめと若ごぼう、軟弱野菜を生産する恩智地域の元気な農家の一人である。
「晩ごはん前に塩茹でのえだまめを毎日食べていました」と博さん。小さい頃から収穫も出荷も手伝ってきたという。
博さんは大学を卒業し、15年間建設会社の施工管理や営業マンとしてサラリーマン生活を送ってきた。浅井家を継ぐものとしての定めから37歳で退職、そして就農。今年で11年目である。
大都市近郊だから断然有利
「八尾えだまめは市場に近いから鮮度抜群なんです。早朝に収穫して食卓に並ぶのはその日中か次の日。おすすめはもちろん塩茹で。ビールと最高の相性ですよ!」。博さんが八尾えだまめの真骨頂をズバリ教えてくれた。
大都市近郊の八尾は卸売市場にすぐ持っていけるから、プリッとした最高の品質まで育てることができ、しかも素早く出荷することができるのである。
えだまめの味の旨みはアミノ酸や糖分。その他の栄養成分はアルコールの分解に役立つというからまさにビールとの相性は抜群なのだろう。ただ残念なことに他の農産物以上に鮮度が重要で、日ごとにその旨みも成分も減少するのがえだまめ。なので、都市近郊の立地である八尾市はえだまめの産地として抜群なのである。
八尾市では学校給食のメニューとしてえだまめが食べられている。博さんの所属する恩智相互出荷組合では数十年に渡り、学校給食に納入してきた。
地域の生産者が地元の特産品を守り、地域の人が小さな頃から味わう、という好循環。八尾の人は、子どもの頃からえだまめを、給食で食べて、弁当で食べて、そして大人になって呑んで食べているのだ。
夏のえだまめは「八尾」と覚えるべし!
関西では「丹波黒枝豆」や山形鶴岡の「だだちゃ豆」が有名であるが、よく考えてみるとこれらは秋の味覚のえだまめである。6月初旬から9月中旬が最盛期の八尾えだまめとは季節が違うのだ。
秋の味覚はメディアがクローズアップすることが多いので毎年見かけるが、テレビの露出こそ少ないものの、夏の味覚は「八尾えだまめ」であるといって過言ではないのだ。このシーズンは他産地のものもたくさん出回るので、旬のえだまめを購入する際は、ぜひ都市近郊の「八尾」産を意識して選んでほしいのである。