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和泉葛城山から大阪湾へと流れる二級河川の津田川と第二阪和国道が交差する川沿いに、微生物を活かした水なす農家、川﨑農園がある。農園の舵取りを任されている川﨑貴彦さん(36)は、ご両親と奥さんの4人で泉州水なすをはじめ小松菜、ホウレンソウ、サラダ水菜などを生産している。
「美味しくて栄養価の高い野菜をつくりたい」
ハウスに入ると、地面との高さがほとんど変わらない低い畝(うね)で、水なすが育てられていた。 畝とは畑で作物を植えるために筋状に盛り上げたもの。ナス科植物の場合は、深く根を張るので高畝にしたほうが良い、と一般的に言われている。
川﨑農園は河川沿いなので石ころが多く、トラクターで深く耕して高畝にすることができない。しかし根を伸ばしやすい環境は作らなければならない。そこで微生物の力を活かして「地下に畝を作る」というこだわりの土づくりが行われている。
農園独自の発酵液肥
納屋の一角ではタンクの中でブクブクと「微生物液肥」が培養されていた。微生物液肥は生きものそのものであるため、翌日に使用する分だけ仕込んでいるという。土壌の肥沃化や植物の成長に大きく影響する微生物は、現在は市販品も出回り注目されているが、貴彦さんは以前より独自で培養している。また、液肥だけでなく畝にかぶせる乳酸菌入りの竹パウダーも製造している。
「日本は発酵の国。農業にも微生物を使わなきゃ損でしょ!」と貴彦さん。
確かにそうだ。ワインの単発酵、ビールの単行複発酵とは違って、並行複発酵といわれる日本酒づくりの作業工程はとても複雑といわれている。お酒以外にも味噌、醤油、漬物など日本食のいたるところに発酵食品が登場する。農業でも市販の肥料が登場する以前は、落ち葉や牛馬の糞を利用した発酵堆肥づくりが各農家で普通に行われていた。
川﨑農園は、初代川﨑彦九郎から100年以上代々続く由緒ある農園である。貴彦さんは六代目。緻密な栄養分析から導き出される施肥設計や、水質管理、圃場環境づくりに至るまで、過去の技術を検証し、更なる栄養価、生産性を追求する川﨑農園の農業技術は、古く、そして新しい。