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梨栽培130年の歴史を復活
大阪市内から南海電車で30分。河内長野市小山田にある中谷農園の三代目園主、中谷仁大さん(34)を訪ねた。
小山田丘陵は、日当たりが良く、粘土質土壌。大阪府下ではいま、岸和田市の包近(かねちか)とならぶ桃の産地であるが、以前は梨の産地だった。梨に赤星病が発生し、地域の高齢化も相まって、多くの農家が生産の容易な桃へ切り替えていったのだという。
130年の歴史を有する小山田の梨栽培を、中谷農園では仁大さんのお父さんの代から復活させてきた。梨は全て棚仕立てにし、自走式の草刈り機やスピードスプレーヤー*などの機械を導入することで規模を拡大。梨園は約1ヘクタールとなり、中谷農園は栽培面積で地域最大、販売まで手掛ける小山田オンリーワンの梨農家となっている。
*スピードスプレーヤーとは、果樹園で使われる薬剤噴霧機。
受粉用の花粉まで自家製
収穫期真っ盛りの「にっこり」の梨園につれていってもらった。一玉が1キロにもなる大玉が鈴なりの光景は、圧巻だ。にっこりは、1984年に栃木県で誕生。「新高」に「豊水」を交配した品種で、栃木県の「日光」と梨の中国語「リー」が名前の由来になっている。ジューシーで甘味の強さが特徴である。
梨園の一角に、袋がけされていない洋梨に似た形の梨を発見。
「これは、ヤーリー(鴨)梨。花粉を採ります」。梨の受粉は同種の花粉どうしではうまくいかない。また、5つの柱頭すべてに受粉させないと実の形が歪(いびつ)になる。このため、人の手による受粉作業が必要になる。仁大さんは、受粉用の花粉を園内で作っている。
果樹の気持ちがわかる梨マイスター
就農して15年目になる仁大さんは、研究熱心で職人気質。地元の農業高校を卒業後、大阪府農業大学校に進学し、農業に熱い志をもつ仲間に囲まれた環境で過ごしてきた。「就農したての頃よりも、果樹の気持ちがわかるようになりました」。
堺市の酪農団地の牛糞と、自家製のもみがらを配合した堆肥で土づくりをする。肥料には魚を主原料にした「魚ぼかし」を敷く。花が咲いたら交配し、一果ずつ袋をかける。除草剤は使わず、草を刈る。接ぎ木用の苗を種から育てることもある。
「いろいろと試しながらやるのが楽しいんです」。そう言ってにっこりと笑う仁大さんは、まさに梨マイスター(第一人者)である。一玉一玉、心をこめてつくられた仁大さんの梨は、河内長野市の気候風土を活かしてつくられた産品ブランド「奥河内ながのfoodo**」の認定を受ける。「ふるさと納税では河内長野市の返礼品にもなっているんですよ」。
**奥河内ながのfoodo認定は、市内で生産された農産品、加工品、サービスが対象。現在28品目(平成28年12月)。
樹成りの、朝獲り完熟梨
仁大さんは、いろいろな品種の梨を接ぎ木で増やしてきた。8月から10月にかけて、幸水、プレミアム、あきつき、むさし、にっこりなどが旬を迎える。
樹成りで完熟したものを早朝に収穫し、畑のすぐ近くにある直売所で販売している。「お客さんから、美味しかったよ~と言ってもらえると嬉しいです」。消費者が近くにいるからこそのダイレクトな手ごたえは作り手のやりがいとなり、農業という仕事の面白さを実感させてくれている。