多彩なチャネルを駆使する水なす農家 北野農園の挑戦

北野忠清さん 泉州水なす

(きたのただきよ / 北野農園)

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週1のイベントや直売所で人気を集める水なす農家

ふだん野菜を買う場所と言えば?スーパー、道の駅の直売所、昔ながらの八百屋、コンビニ、インターネット通販…。数十年前と比べると、野菜を買える場所は随分と多様化している。貝塚市で農業を営む北野農園は、バラエティに富んだ野菜の販路を有し、地元民から人気を集めている農家の一つだ。

水なす畑で作業中の北野さん

特に人気なのが、貝塚駅の近くで毎週火曜日の夜20時から10分間だけ開催される「ベジナイト」。

開催日時以外は特に決まったルールはなく、何が売られているかは行ってみてのお楽しみ。そんなワクワク感と採れたての新鮮な野菜を買えることから、仕事帰りのサラリーマンを中心に支持を得ており、多いときには30人ほどのお客さんが集うという。10年以上前から続いているこのイベントは、600回以上の開催を通じて、すっかり地域にとっての日常となっている。

ベジナイトの風景

また、自宅の庭先にある無人直売所も、地域の方々から人気だ。北野農園を率いる北野忠清さんは「スタッフが袋詰めなどを行う作業場からも見渡せる直売所は、訪れたお客さんと井戸端会議をするなど、地域の方とのコミュニケーションの場としても機能しているんです」と嬉しそうに語る。

北野農園の無人直売所の加工品

北野農園の無人直売所のPOP

「新型コロナウイルスの影響でステイホームが提唱され、買い物にも行きづらいご時世なので、訳あり野菜をお得なセットで販売した“STAY HOMEキャンペーン”や、栄養価が高いことで人気のぬか床セットが最近販売サイトを通じて売り上げを伸ばしていますね」と、インターネット販売にも力を入れているそう。

 

長く続ける秘訣は、手間もコストも抑えること

しかし、さまざまな販路を開拓するということは、野菜のPRができる一方、それぞれにかかる手間とコストは相当だ。そこで北野さんは農業を続けるかたわらで運用できる方法を考え、負担を抑えて野菜を販売し続けている。

北野農園の無人直売所

例えば、ベジナイトの開催のタイミング。通常の流通では、収穫した野菜は箱詰めして翌日以降に出荷する。ベジナイトは、収穫から出荷までの合間に限定して開催している。

「収穫当日の夜に売り出すようにすれば、売る方も楽ですし、不揃いで市場には出荷できない野菜をセットで売ることもできる。何よりお客さんに採れたての新鮮な野菜をお届けできます。一石何鳥にもなるでしょう」。

北野農園の水なす畑

無人直売所やインターネット販売にも、手間とコストを抑える工夫が見受けられる。

「道路脇などで無人直売所をされている方も多いですが、それだとそこまで野菜を持ち運ぶ手間がかかる。その小さな手間すらも省きたかったので、庭先に設置して手すきのときに野菜を置けるようにしました」。

さらにインターネット販売をするサイトは、前職のIT関連の仕事で培った知識と、知人の協力のもと自作したそう。運営もすべてスタッフで行っているという。

「外部委託などのコストもかからないうえ、今のニーズに合った商品をお届けできるので、他にはないアプローチができます!」。

インタビュー中の北野さん

菊菜の畑を歩く北野さん

そこまで考えて販路を広げる理由は、リスクを回避して長く続けられるようにするためだという。

「一つの販路に依存してしまうと、その販路で売ることができなくなったとき代替が利かなくなってしまいますが、たくさん販路を持っておけば、そういった心配はしなくて済みます。僕の代でその基盤を作って、次代に引き継ぎたい。これからずっと先まで続けられる方法を、僕がつくっておきたいんです」と、長く続けた先にあるビジョンを話してくれた。次代へバトンタッチした後のことまで見据えている北野さん。販売方法だけでなく育成方法にも、彼ならではの哲学があるそうだ。

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