夫婦二人三脚で作る愛情たっぷりのバジルソース。

大村元昭さん バジル

(おおむらもとあき / basil.sc)

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100%バジルソースのためにバジル栽培

藤井寺市でバジルを栽培し、加工から販売まで夫婦で6次産業を完結している夫婦がいる。「basil.sc」の大村元昭さん、成恵さん夫婦だ。

自宅の玄関に入った途端、バジルのいい香りがし、バジルソースのパスタが食べたくなった。

バジルの加工場が自宅内にある。ちょうど収穫したばかりのバジルを奥さんの成恵さんと、気心の知れたパートの方と2人で、山盛りのバジルの葉っぱを切っている最中で、家じゅうがバジルの天然の香りに包まれていた。

大村さんが立ち上げたバジルソースの販売会社「basil.sc」で使用しているバジルは、すべて自社栽培だ。

フレッシュ市場には出荷せず、すべてバジルソースに加工するために栽培している。自分たちで栽培しているので、新鮮なバジルのいいところをすべて使えるのが強みだ。

勘違いから始まったバジル栽培

バジルソースを作ることになったきっかけは、大村さんの母親のひと言だった。 30歳を過ぎた頃、今まで勤めていた会社を辞めて、フリーのウェブ・エンジニアになった。通勤時間が無くなった分、自由な時間ができ、朝夕の空いた時間を使って親戚の畑で野菜の栽培を始めた。ちょっとした気分転換になっていたそうだ。

そんなある日、自分の家の畑が少し空いていたので、お母さんに「何か植えようか」と言った。 すると「おばあちゃんがバジル好きやから植えといて」と言われ、一筋分だけバジルを栽培してみることにした。

夏になると、見事にバジルが茂った。これがバジルとの出会いであり、始まりだった。とにもかくにもバジルが思いのほか大量に収穫できたので、何に使おうかと調べたところ、バジルソースが使いやすそうだから作ってみようということになった。ネットで作り方を検索し、試しに作ったバジルソースをパスタに混ぜたら、めちゃめちゃおいしい。友達にあげたら、また欲しいとリクエストが来た。

もともと、農産加工品を作ってみたかったこともあり、バジルソースならネットショップでの販売に合うのではないかと閃いた。2008年当時は、バジルソースは輸入のものが多く、国産は少ない。またオイルが少なめで塩分が強いものが多かった。おいしいバジルソースを作れば、市場はあるはずだ。ムクムクと構想が湧いてきた。

バジル栽培のきっかけはすべて、おばあちゃんが好きだったことから始まったのだが、そこから予想もしない展開に進んでいく。だから人生は面白い。

「後でおばあちゃんに、バジル食べるか? ってきいたら、バジル? よう食べへん、嫌いやって言われたんですけどね」と、大村さんは笑う。肝心のお母さんもそんなことを言ったかどうか、記憶が曖昧らしい。なにが人生の転機になるかわからないものだ。

ネットで売ってみようと山盛り植えたバジル

バジル栽培も、バジルソースに加工してネット販売することを目的に生産を始めた。そして、バジルソースの試作を何度も繰り返した。現在パートに来ている高橋さんは、以前、大村さんが住んでいたマンションのお隣さんで、成恵さんに頼まれて試食したバジルソースはとてもおいしかったと語る。

「小さい瓶に7パターンくらいのバジルソースを試作して、みんなに食べてもらってどれが一番口に合うか聞いたんです。僕は5番がいいとか、私は3番がいいとか言ってもらいました」と成恵さん。何度も試食を繰り返し、販売に至るまで1年半から2年の歳月を費やし、やっと納得のいくレシピが完成した。

翌年、0.5反の畑で本格的なバジル栽培が始まった。手探りでのスタートは、失敗続きだった。暖かくなるとバジルは順調に成長するが、加工作業が追い付かない。それでもバジルの成長は待ってくれない。花が咲いてしまうと風味が落ちるので、バジルソースには使えない。

「バジルを山盛り植えて、バジルソースを作ったんですが、売り先はないし、賞味期限があるから不良在庫ができてしまって大変でした」。すべて手作業で、機械と言えばミキサーだけである。干すのも手作業、葉っぱをハサミでチョキチョキ切るのも手作業、1回にできる瓶詰めは20個が限界だった。

しかも肝心な売り先がなかなか見つからない。週末だけイベントに出て、慣れない販売するという、二足のわらじ状態が続いた。そんなおり、大阪府がネットショップを始める情報(大阪ミュージアムショップ)を得て、面白そうだと受けてみたところ、「大阪通販道場*」の1期生となることができた。

卒業後、大阪ミュージアムショップで販売してもらえることになり、軌道に乗ることができた。仲間も増えた。このころからイベントや勉強会にも積極的に行くようになり、異業種の仲間もできた。

*大阪通販道場とは「おおさか地域創造ファンド」助成金を活用した事業

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